ロータリークラブの「一業種一会員制」は現在の定款にはありませんが、この会員構成を組織原則として主張したのは、アーサー・フレデリック・シェルドンでした。1908年1月、シカゴ・クラブに入会した彼は、次々とロータリークラブを性格づける制度や規則を作っていきます。「毎週一回の定例例会」も彼のアイデアであったといわれています。「一業種一会員制」の意味は、「親睦のため」ばかりではなく、会員夫々の職業を通して地域社会を潤していく「奉仕のため」という意味もありました。
ロータリーが元来主張する「奉仕」とは、Enter to learn,G0 forth to serve, (入りて学び、出でて奉仕せよ)の言葉に表現されている通り、「ロータリー」という場で学びを終えた会員が、ロータリーの例会場を去って、自分の職場に戻り、自分の職業の場で、或いは地域社会に於いて自分が所属しているグループに於いて、他人や地域社会に対して何らかの貢献をすることです。
「一業種一会員制」では、生まれも、育ちも、生活習慣も、信条も異なる異業種の人とが克服していかなければならない課題は幾つもあると思います。違いを先ず受け止めること。謙虚に耳を傾けてその真意を知る努力をすること。自分の考えは責任を持ってしつかり伝えること。議論を尽くすこと。妥協すべきことや互いが共に変更しなければならない点があることを前提として、或る到達点を共有する。到達点に至らなくとも、努力を共有したことによる仲間としての共感を確認し合って、決して人格全体の否定などという悲しい結末にしないことです。その共に生きる知恵をはぐくむ努力こそが「ロータリーは人づくり」と言われる理由です。
僕の父戸田孝は『ロータリーは寄りて己の思考の限界を知る』と述べています。これからも会員間でいろいろな問題が起り、言い争いになることがあるかも知れませんが、お互いの思考には限界を認識した上で理解しあう努力を続けましょう。
参考文献:松宮剛(茅ヶ崎湘南RC):ロータリーの親睦,2003